この記事では、A320のMCDUの設定・入力手順を初心者の方にもわかりやすく解説しています。
この記事は、実際のエアバスパイロットの方とお話をしながら、作成したものです。
手順ももちろんですが、スイッチの意味なども丁寧に解説しています。
今回は、完成度の高いFlyByWire「A32NX」という無料のアドオン機体を使って、MSFSのA320のMCDUの設定手順を丁寧に解説してきますよ。
ぜひ最後までご覧ください。
前回の記事
前回は、A320のコールド&ダーク状態から、機体の立ち上げをおこないました。
フライトプランの作成方法も紹介しているので、ぜひご覧ください。
MCDUの基本設定
1. 機体情報を確認
まずはMCDUの初期設定をしていきます。
「MCDU MENU」から「FMGC」を押してください。
ここで機体の情報を確認できます。
機体は「A320-200」を使用していることなどが分かりました。
基本的にはこの画面で操作することはありません。
2. INITページを編集
まずはINITページを入力していきましょう。
1ページ目
次に、INITページを編集するので、MCDUの中央にあるメニューから「INIT」をクリックしてください。
ここで出発空港・到着空港やフライトナンバーなどを設定することができます。
画面一番下の部分を「スクラッチパッド」と言います。
出発空港/到着空港のICAOコードを入力
今回は羽田から伊丹までのフライトなので、「RJTT/RJOO」と打って、右上の「FROM/TO」の右側のボタンをクリックします。
これで出発・到着空港を入力できました。
代替空港を入力
「ALTN」には、もし到着空港に着陸できない場合のダイバードする空港を入力します。
今回は代替空港なしでフライトするため、デフォルトの「NONE」としていますが、設定したい場合は4桁のICAOコードを入力してください。
フライトナンバーを入力
「FLT NBR」には自分の好きな便名を入力してください。
コストインデックスを入力
「COST INDEX」にはコストインデックスを入力することができます。
A32NXの場合は1〜999まで入力可能。
数字を低く設定すると燃費重視のフライトに、数字を高くすると到着時間重視のフライトとなります。
今回はよく使用される「15」のコストインデックスで飛ぼうと思います。
巡航高度を入力
「CRZ FL/TEMP」には、巡航高度を入力します。
今回は34000ftとしました。
これはフライトプランを作成したsimbriefが自動で計算した値です。
FL340(34000ft)と入力すると、自動的にその高度の温度が入力されます。
ただ、自分で設定したい場合は高度を入力した後に「/-50」などと入力してください。
これでINITページの1ページ目(PageA)の入力が完了しました。
2ページ目
続いて、2ページ目(PageB)を編集します。
2ページ目に移動するには、MCDUの左の方にある「→」をクリックしてください。
ZFWは「Zero-fuel weight」、CGは「center of gravity」の略です。
ZFWは機体全ての重量から燃料を引き算した、残りの重量のことです。
一方、ZFWCGには機体の重心を入力します。
A32NXでは自動で計算してくれます。
「ZFW/ZFWCG」の右側のボタンを2回押しましょう。
もちろんsimbriefで計算した値を手動で入力してもOKです。
「BLOCK」には、搭載している燃料の重量を入力します。
simbriefで計算した値を入力するか、MSFSの方で事前に燃料を設定している場合は、その値を入力してください。
MCDUに入力する燃料はt(トン)なので、KGからtに変換しましょう。
1000で割り算するだけでOKです。
これで2ページ目(PageB)の入力が完了し、INITページの入力が全て終わりました。
お疲れ様でした。
エンジンをかけるとPageBにはアクセスできなくなるので注意。
3. フライトプランを入力
ここからはフライトプランを入力していきます。
MCDUメニューの「F-PLN」をクリックしてフライトプラン編集画面にアクセスしましょう。
離陸滑走路とSIDを入力
まず出発空港の左側のボタンを押します。
すると以下のような画面になります。
左上にある「DEPARTURE」から離陸滑走路を選択します。
今回は34Rを使用します。
ただ、滑走路を選択しようとすると34Rの項目がないので、MCDUの↑↓キーでスクロールして34Rを見つけましょう。
滑走路を選択すると、続いてはSIDの選択をします。
フライトプランで言うと、滑走路の次に表示されている文字列です。
大きな空港だと、SIDの出口を選択することもできますよ。
今回はLAXAS3を使用します。
ここまで入力したら、右下の「INSERT」を押してフライトプランに反映させましょう。
巡航経路を入力
フライトプランの最後(F-PLN DISCONTINUITYのすぐ上)にあるウェイポイントの左側のボタンを押して、巡航航路を入力していきます。
フライトプランの経路を確認して、「Y16」などの航空路が入っている場合は、「AIRWAYS」を選択します。
ウェイポイントが入っている場合(DCTと表示されている場合)は、「NEXT WPT」にウィポイント名を入力してください。
航空路を入力する際は上のように、左側に航空路の名前、右側に航空路の出口となるウェイポイントを入力します。
これはsimbriefのフライトプランの順番通りに入力していけばOKです。
できたら、「INSERT」を押してフライトプランに反映させます。
STARと着陸滑走路を入力
最後に、到着空港のSTARと着陸滑走路を選択します。
到着空港の左のボタンを押すと以下のような画面になります。
「ARRIVAL」を押しましょう。
離陸滑走路と同じ要領で、着陸方法とSTARを入力していきます。
今回は、ILS32Lに降りたいと思います。
STARは「IKOMAE」を選択しました。
STARは、フライトプランの着陸空港のすぐ左側に表示されている文字列(アプローチ開始地点)を選択してください。
できたら「INSERT」を押してフライトプランに反映させましょう。
フライトプランの確認
最後に出来上がったフライトプランを地図で確認してみましょう。
MCDUをフライトプランの画面にしたまま、赤枠で囲ったノブを「PLAN」に回してください。
そうすると、正面のナビゲーションディスプレイ(ND)の表示が切り替わります。
縮尺を変えたい場合は、以下の赤枠のダイヤルを回して変更してください。
そして、フライトプランが表示されている画面で、↑↓キーを押すとNDが連動して経路を確認することができます。
最後まで経路を確認し、途中で途切れていないかや、遠回りしていたり戻ったりしていないかチェックしましょう。
フライトプランに高度制限を追加してみましょう。
ウェイポイントの右のボタンを押して、「ALT CSTR」に高度を入力します。(入力後はマゼンタ色に変わります)
高度の前に+を入れる:設定高度以上を飛行
高度の前にーを入れる:設定高度以下を飛行
高度の前に何も入れない:設定高度を飛行
設定できたら、左下の「RETURN」を押しましょう。
これでフライトプランのウェイポイントに個別に高度制限を追加することができました。
以上でフライトプランの入力が終わりました。
お疲れ様でした。
4. パフォーマンスページを編集
続いて、パフォーマンスページを設定していきます。
MCDUメニューの「PEFR」をクリックしてください。
TAKE OFF RWYの設定
まずは離陸設定をしていきます。
トランジションALTを入力
まず、「TRANS ALT」に14000と入力しましょう。
TRANS ALTとは、気圧高度計の切り替え高度のことです。
海外は18000ftが多いですが、日本の場合は14000ftでQNHをSTDに切り替えます。
フラップを設定
続いて、フラップを設定します。
基本的には、フラップは「1」です。
ピッチトリムも設定する場合は、「1/UP0.5」などと入力してください。
DN:ダウントリム
UP:アップトリム
ピッチトリムは飛行時に機体の傾きや上下の動きを調整するための装置です。
具体的には、水平尾翼の傾きが変わります。
FLEX TO TEMPを入力
離陸時、エンジンを痛めないように仮想の温度を設定します。
A32NXの場合、-99〜99まで入力できます。
大きくすると離陸時のエンジンの推力が上がりますが、燃費は悪くなります。
今回は55°で設定しました。
V1・VR・V2を入力
この3つの速度は、左側のボタンをそれぞれ2回ずつ押すことで自動で計算してくれます。
ちなみに、フライトプランを入力していないと自動で計算してくれません。
- V1 (Takeoff Decision Speed):
V1は、離陸決定速度を示します。これは、パイロットが離陸を中止するかどうかを決定するための速度です。V1を超えると、パイロットは離陸を継続しなければなりません。V1以降に発生したエンジンの故障などの問題が発生した場合、離陸を中止することが困難になるためです。 - VR (Rotation Speed):
VRは、航空機を地面から離し、飛行の姿勢に持ち上げる速度です。これは通常、離陸後の最初の段階で航空機のノーズを上げる速度です。VRを達成すると、航空機は離陸の準備が整い、地面から離れる準備ができていることを示します。 - V2 (Takeoff Safety Speed):
V2は、離陸安全速度を示します。これは、離陸後にエンジンの故障が発生した場合に、安全に離陸手順を続行できる速度です。V2は、エンジンの故障時に航空機が安全に上昇し、適切な高度に達するために必要な最低速度です。
CLBの設定
次のフェーズのCLB(上昇中)のフェーズの設定をしていきます。
基本的にはこの部分は触らなくてOKです。
DESの設定
次に、DES(降下中)の設定をしていきます。
基本的にはこの部分も触らなくてOKです。
APPR
次に、APPR(アプローチ中)の設定をしていきます。
ここでは、QNH(気圧)・TEMP(気温)・TRSNS ALT(トランジションアルト)・BAROもしくはRADIO(ミニマム高度)を設定します。
・オートランディングする場合は、RADIO(ミニマム高度)に「NO」を入力します。
・オートランディングを使わない場合は、BAROにミニマム高度を入力します。(ミニマム高度はアプローチチャートで確認してください。
QNHとTEMPに関しては、その時の気象状況によって変わるので、最新情報を入力してください。
ウェザー情報の取得方法を確認しましょう。
これでカンパニーにリアルウェザーの情報のリクエストが送信されました。
ここの表示で複数の選択肢がある場合は、一番上が最新となっているため、一番上をクリックしてください。
すると今の天気の情報を細かく確認できますよ。
MCDU内でも天気の情報を確認できるのですが、その天気の情報をMCDUに打ち込むとなったら数値を覚えて画面をいちいち切り替えないといけませんよね。
そんな時は、PRINTでウェザー情報が記載された紙を印刷しましょう。
フラップレバーの下側にある印刷機から紙が出てきます。
紙をクリックすると、スロットル前に自動でおいてくれます。
これで紙に書かれている天気情報を見ながら、残りの情報をMCDUに打ち込んでいきましょう。
5. RADNAVを設定
MCDUメニューの「RADNAV」ではILS周波数を確認できます。
フライトプランをすでに入力している場合は、自動で「LS/FREQ」にILS周波数が入力されているはずです。
まとめ
以上でMCDUの一通りの設定・情報の入力が終わりました。
お疲れ様でした!
次回は、プッシュバックやエンジンの起動の手順を詳しく解説していますよ。
ぜひご覧ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。